Vol.2

もっと認められるべきジャズ・ミュージシャン2

初見ジャケ購入癖から、世の中でもっと認知されるべきミュージシャン、いわゆるアンダーレイテッドなミュージシャンを発見することがあります。 これもコレクションの喜びであり、是非とも知って欲しいので紹介します。  基準はジャズ批評の楽器別ミュージシャンで取り上げられていないこと、但しヘボなミュージシャンでは意味がないので自分なりに評価できるミュージシャン、ジャズ界に輝く三等星達を選びました。 これらのレコードに遭遇するチャンスは少ないと思いますが、万一見付けたら買って損はない筈です。(好みの問題は残りますが!)

TOP < Vol.1 Vol.2 >
Title, Label Member, Tune  Comment
Teddy Saunders
タイトル:"SUE BLUE"
レーベル:Discovery DS-809


★★★

メンバ:
Teddy Saunders(p)
Carl Burnett(dr), Gary barone(tp), Charles Owens(fl,sax), Dick Berk(perc), John Heard(b)
録音:
Jan 12,13 1979
曲目:
Sue Blue, Polyby, Oppornockity Tunes, Blues For Jimmy G, Lament For Koko, Mr. Cosmo Cat

≪マイナー・ジャズ・レーベル≫ページのDiscoveryで紹介しても良かったのですが、超マイナーなミュージシャンなので、こちらで紹介します。 Teddy Saunders(テディー・サウンダース)って何者? 分ったことは下記のみ。
*ロシア系アメリカ人
*高校時代にMiles/Coltraneの影響下でトランペットを演奏
*サンタモニカ・カレッジでは動物学を学ぶ
*Jimmy Garrison、Zoot Sims、Bill Evans(?)、George Russel、Al Cohn 等々と競演
*1968年にSonny Greenwich(gu)のカルテット(他にはJimmy GarrisonとJack DeJohnette)に参加
*このLPの他に以下のアルバムを発表

・BLUES & OTHER HAPPY MOMENTS/THE BARONE BROTHERS(PALO ALTO JAZZ: PA8004)
・Frederic Hand - Jazzantiqua(Music Masters Jazz)

この人、何者か知っていたら教えて下さい!

内容ですが、全曲オリジナルで固められ、このリーダ・アルバムに鬱憤をぶつけているように聴こえます。(自棄になっているのではなく、全精力を注いでいる) 全体的にはゲイリー・バローンの瑞々しく素直なトランペットが印象的なことと、チャールス・オーエンが非凡なミュージシャンであることを認識しました。 肝心のテディーですが、ツーハンドでガンガン弾きまくる筋肉質のピアニストでリーダ・アルバムをもっと作って当然の実力を備えています。
3曲目<Oppornockity Tunes>がベスト・チューン、明るく華やいだ曲、聴き応え十二分のジャズ・サンバで、作曲能力の高さも示した作品です。
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 タイトル:"The Great Fontana"
レーベル:Uptown UP27 28


★★★
メンバ:
Carl Fontana(tb)
Al Cohn(ts), Richard Wyands(p), Ray Drummond(b), Akira Tana(dr)
録音:
Sep. 5&5 1985
曲目:
Shoutin' On A Riff, It Might As Well Be Spring, Soon, Showcase, Expubident
 
ついに登場、Carl Fontana(カール・フォンタナ)です。 これだけの実力者がほとんど知られていない日本ジャズ界の視野の狭さ、大げさではありません。 上手い順にトロンボーン奏者3人を挙げろと言われたら、貴方は誰を推薦しますか? J.J. Johnson、Steve Turre、Roswell Rudd、最後に特別推薦枠で中川英二郎...異論はあると思いますがどうでしょう? ところがドッコイ、カール・フォンタナを忘れていませんか、そんな人知らないと多くの人が言いそうなので、超軽く紹介します。

1928年ルイジアナ生れ、ウディ・ハーマン、ライオネル・ハンプトン、スタン・ケントンなどのビック・バンドに参加、カイ・ウインディングのFour Tromboneに参加した後には、雇用の安定と家族の生活を理由にラスベガスでコマーシャル・ミュージック中心の活動に移り引き篭もる、2003年に亡くなった。

私が知ったのは、Lloyd Ellis Quintetの<Las Vegas-3 A.M.>Famous Doorというレコードで、ジャズを聴き始めてかなり経過してからの事なので偉そうなことは言えません。 これも仕方ない事で、ほとんどリーダ・アルバムを作っていません。 

私がコメントを書くことは恐れ多いほど充実した相川等さん(プロのトロンボーン奏者)のページがありますので、そちらを参照して下さい。

繰り返します。 カール・フォンタナはスゴイ。再認識して下さい!

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タイトル:"UNICORN DREAM"
レーベル:Laughing Angel Records
LAR33


★★★
 
メンバ:
Noah Young(b)
Cleve Pozar(dr), Mark Whitecage(as), Bobby Naughton(vib), Perry Robinson(cl), Andy Lavern(p,e-p), Peter Loeb(ts)
録音:
1980
曲目:
Heart Seed, Breakfast, The Wizard, Unicorn Dream, Lake Taco, The Alchemists' Reunion, Open Secret, Blue Whiskers, Fancy Free

Noah Young(ノア・ヤング)、「知ってる、知ってる.....」と言いそうな名前ですが、この名前を知ってる日本人は10人ほどです。 貴方はその一人? 
私も、ライナーも読まずに「このベーシスト上手いのに全然知られていない、不思議だ...」とずっと思っていました。 これを機に略歴を調べました。

1968年から1976年の9年間、Richard Youngsteinの名前で活動した。 主な活動は、”The Paul Bley Synthesizer Show”や”Escalator Over The Hill”に残されている。 また、Roswell Rudd、Arnette Peacock、Bill Dixon、Robin Kenyetta、Karl Berger、Perry Robinsonなどとも働いたが、数例術を学び1976年末にはLAに移りNoah Youngと改名し、それまでのキャリアも捨ててしまった。 LAでは心理学の博士号とライセンスを取得し、ヒーリング(癒し)の分野で活動している。 現在はDr. Noah Youngと名乗り、本アルバムの他に”Freaks: No Fear of Contafion”を1995年にリリースした。

一曲を除きコンテンポラリー・ジャズです。 A面1曲目<Heart Seed>はアルトのワンホーン・トリオですが、サム・リバースのStreams(Impulse)を思い起させるスリリングな演奏で、この曲を聴けばNoahのベース・テクニックは皆認める筈です。 B面3曲目<Open Secret>はMark Whitecage、Perry Robinsonがフリーに押し捲っているのですが、ベース・ソロとなると突如ハード・バップに変化する奇妙な演奏。 4曲目<Blue Whiskers>ではBobby Naughtonのバイブにアルコで応酬。 何でミュージシャンから離れヒーリングに行ってしまったのか、勿体ない逸材です。

余談 : B面1曲目<Lake Taco>にピアニストAndy Laverne(Steeple Chaseから多数のアルバムをリリース)が加わっています。

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タイトル:"CLEAR VISION"
レーベル:Sackville 4007


★★★★
  
メンバ:
Joe Sealy(p)
Dave Young(b), Pete Magadini(dr)
録音:
May 24 1981
曲目:
Summertime, All Blues, Clear Vision, What Is This Thing Called Love, We'll Be Together Again, Playa Caliente, Star Eyes, It's All Right With Me
 
カナダ出身のピアニストといえばオスカー・ピーターソン、そのオスピーに初期の影響を受けたカナダ人ピアニスト、ジョー・シャーリー(Joe Sealy)のトリオ・アルバムです。 大きな特徴がある訳ではありませんが、トリオとしての完成度が抜群に高く魅力的なアルバムに仕上がっています。 ドラムのPete Magadini(VOL.1最下段を参照)は難しいことをやっていますし、ベースのDave Youngはブンブン鳴らしていますが、二人とも決して邪魔となっている訳ではなく絶妙なバランスを保っています。 ジョーは明るく弾むようにスイングするピアノ、元気が出ます。 Joe Sealyの略歴は次の通りです。

1939年モントリオール生まれ、ミュージシャン、コンポーザ、ラジオ放送者、Triplet Records Inc.の社長など、多方面での成功者として知られている。 ピアニストとしての活躍には“Blood Sweat and Tears”でのツアーが挙げられる。 また、HONDA SAVERのコマーシャルでピアノを弾いていたそうだ。

1969年にデビュー・アルバム”Joe Sealy Trio”Canada Radio Canada International を、次に本レコードを1981年にリリースしましたが、他には数枚のレコードしかリリースしておらず、認知度の低いピアニストです。

Joe Sealyがこのようにアンダーレイテッドなピアニストに終わった(終わるであろう)理由は、多才であったが為に多方面で成功し、ジャズ・ピアニストだけで身を立てる必要がなかったためと思われます。 ピアノ一本で勝負していれば、メジャーなピアニストの一人として後世に名を残す力量を持った人です。 

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タイトル:"We're Swinging"
レーベル:KAAI Records BB2838


★★★★ 
メンバ:
Betty Bryant(vo,p)
Eugene J. Wright(b), Clarence Johnston(dr)
録音:
Unknown
曲目:
Like Someone In Love, Easy Living, On Green Dolphin Street, In The Park On A Hot Summer Day, I'll Remember April, Jackie's Dish, Every Day

日本では、どれだけの人に知られているのでしょうか。 私もこのレコードを数年前に入手し初めて知りました。 同時に、こんなに素晴しい歌手が知られていない事実、愕然です。

ベティ・ブライアント(Betty Bryant)に関する情報は非常に少なく、彼女のHPを見ても多くは書かれていません。 その中から要約すると次の通りです。

1930年(?)カンサス・シティ生まれで、幼い頃からピアノのレッスンを始める。 最初は地元のラジオ・ショーやクラブで歌い始め、1955年にはLAへ活躍の場を移す。 LAではベーシストLeonard Sohlmanとタックを組み、Leonardが1970年に亡くなるまで活動を継続。 現在(2010年)も現役で頑張っており、最新CD<No Regrets>を2009年に出している。 日本にも活躍の場を持っているようで、毎年3ヶ月、代官山のTableaux Lounge(タンブローズ・ラウンジ)に出演しているとのこと。(Tableauxのボスに良くして貰っていると述べている) 2007年までは確認できたが現時点では不明。

このレコードがデビュー・アルバムで、続いてカセット2本、CD8枚をリリースしているが、これで全てと少ない。 ボーカルとピアノを両立させており、どちらも一流だ。 ピアノはJay McShannに影響を受けたと述べているが、淡白な感じでSy Colemanを想起させる。 ピアノだけでも充分にいける実力だ。 ボーカルも大変に洗練されており、温かみのある語り掛けるようなスタイル、ブルージーでスインギー、白人っぽさも感じさせる。 その感じは2曲目<Easy Living>を聴くと良く現れている。 可愛らしさも備えた超お勧めボーカルです。

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タイトル:”Introducing The Barry Kiener Trio”
レーベル:Phoenix Jazz 1002


★★★★  
メンバ:
Barry Kiener(p)
Tom Warrington(b), Dan D'Imperio(dr)
録音:
Feb. 19, 21 1980
曲目:
Donna Lee, This Is All I Ask, I Should Care, Milenburg Joys, Our Delight, I Only Have Eyes For You, The Right To Love Everything I Love, K.O. Blues
 
針を落とした瞬間、上手いと唸ってしまう。 アップ・テンポな曲<Donna Lee>で始まる。 Many Faces of Barry Kienerのタイトルが相応しく、ハードバップ、ブギウギ、ラウンジ・ピアノ、多様なスタイルの演奏のどれもが最高に上手いのだ。(購入時のコメント)

Barry Kiener(バリー・カイナー)についての経歴は良く分らないが、 1955年NYCロチェスターに生まれ、人気とは無縁のままヘロイン過剰投与で1986年30歳の若さで亡くなっている。 Buddy Richの右腕としての演奏活動が長く、欧州や日本へのツアーにも参加しBuddy Richの6枚のLPで聴くことが出来ます。 また、ミュージシャンの評価も高く、Stan Getz、Joe Venuit、Nick Brignola、Helen Humes、Zoot Sims、Philly Joe Jones等とギグったそうですが、勿体ないことに録音は残されていません。 リーダ・アルバムは本作とプライベート盤<Live At Strathallan>の2枚だけしか残していません。

演奏スタイルは購入時のコメントに書いた通り未確立ですが、どれを聴いてもけれんみが無く、濃密で深みのある演奏は風格さえ感じさせるものがあります。 もし後5年生きていたらクリフォード・ブラウン同様≪若くして逝った天才≫として名を残していた筈です。

一番入手可能なものは、Buddy Rich<plays and plays and plays>(RCA)あたりだとう思われるので聴いてみて下さい。

余談ですが、ライナーによるとBarry Kienerは大変な”Vinyl Junkie”だそうで日本へのツアー時には110枚ものLPを購入したそうだ。 Blue Note 1568(Hank Mobley)または4084(Baby Face Willette)を買ってあげれば何処でも演奏するが、もしBlue Noteの話題を出そうものなら演奏が聴けなくなってしまうので注意するようにと書かれている。

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タイトル:”Wonderful Ones”
レーベル:Spinnster Records SP-0005


★★★   
メンバ:
Tony Castellano(p)
Ira Sullivan(as,ss,a-fl,tp,flh), Sam Chiodo(b), Rich Franks(dr), Steve Bagby(dr)
録音:
Sep. 27 & Oct. 11 1983
曲目:
Wonderful One, The Boy next Door, Gina Christine, My Heart At Thy Sweet Voice, RASHID, Horns Of Di Lama, You My Love, Wonderful One
 
Tony Castellano(トニー・カステラーノ)、息子のJr.(ピアニスト)に関する情報は少しありましたが、本人については死亡時の以下の記事(1999年12月)しか見つかりませんでした。

トニーはブルックリン生まれ、双子の兄弟ドルフィとのコンビで売っていたそうで、Dizzy Gillespie、Anita O'Day、Chet Baker、及び地元ミュージシャンIra SullivanやDavey Schildkraut等とも共演した。

レコーディングはこの盤と”IRA SULLIVAN”( A&M/Horizon SP706)の2枚だけのようで、両盤とも古くからの地元仲間であったアイラ・サリバンが絡んでいます。

本盤でもアイラは複数の楽器を演奏していますが、フルート以外の楽器を演奏した曲はどれも聴き応えがあります。 A面はあまり盛り上がりませんが、A面最後の曲”My Heart At Thy Sweet Voice”はオペラ「サムソンとデリラ」から、完全にオリジナル・キーで演奏しておりクラシックの演奏家かと思わせ、突如このような音楽が挿入されるとフレッシュで爽やかさを感じる。 B面に入ると一変チャレンジャブルな演奏となり、トニーもアイラに負けないレベルで盛り上がっている。

SpinnsterというレーベルはEddie Higginsを2枚出している。 欲しい!

今後の予定
Gordon Brisker
 Fred Anderson
Mihaly Dresch
Mark Goldsbury
J.R. Mitchell
Dave Pozzi
Dwight Dickerson
Bert Willson
Walter Thompson
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