Vol.1

もっと認められるべきジャズ・ミュージシャン1

初見ジャケ購入癖から、世の中でもっと認知されるべきミュージシャン、いわゆるアンダーレイテッドなミュージシャンを発見することがあります。 これもコレクションの喜びであり、是非とも知って欲しいので紹介します。  基準はジャズ批評の楽器別ミュージシャンで取り上げられていないこと、但しヘボなミュージシャンでは意味がないので自分なりに評価できるミュージシャン、ジャズ界に輝く三等星達を選びました。 これらのレコードに遭遇するチャンスは少ないと思いますが、万一見付けたら買って損はない筈です。(好みの問題は残りますが!)

TOP < Vol.1 Vol.2 >
Title, Label Member, Tune  Comment
Frank Evans@NOCTUARY
タイトル:NOCTUARY
レーベル:Blue Bag BB101


★★★★
メンバ:
Frank Evans(gu)
録音:
09/Nov/1975
曲目:
Nuages, A Child is Born, Send in the Clowns, Wave, What are you doin the rest of your life?, Gymnopedies, Round Midnight, The song is you, Body and Soul
Frank Evans(フランク・エバンス)ってFrank永井とBill Evansを連結したような奇妙な響きを持った名前ですね。
全く知らなかった人で、しかもギター・ソロ(Derek Bailey二世だったらどうしよう、未だ接近出来ず)、ジャケットもJAZZの香りがしない、買うのに相当迷いました。 一期一会、買わずに後悔は出来ないと思い購入。 大当たりでした。

この人は英国人で、1960年代にはTubby Hayes(タビー・ヘイズ)とのレコーディング(JAZZ TETE A TETE)を残し、その後自主レーベルBlue Bagで数枚のアルバム(5枚?)を作っています。 2007年6月に76歳で死去。 BBCテレビに出演したり、映画の楽曲を作ったりで、英国ではそれなりに名の知れたギタリストだった様です。 

ソロ・ギターに定評があり、本アルバムも非常に繊細で落ち着いた演奏を聴かせます。 クラシカルな響きを持った丁寧な演奏には万人が共感すること間違えなし。 取上げられている曲はどれも馴染み深いものばかりで、下手をすると安っぽく成りがちですが、このレコードではどこまでもリリカルで美しく、そして格調の高い演奏となっています。 夜一人で聴くには最高のレコード。

ページの先頭の戻る
John Fisher@In\INTERFace
タイトル:INTERface
レーベル:NY CC
-722

★★★★

メンバ:
John Fisher(p),
Mark Whitecage(reeds),Armen Haburian(perc),Rick Kilbun(b),John Shea(b),Jay Clayton(vo),Laurence Cook(dr)
録音:
later part of 1975
曲目:
What IF?, PUOM!,Temple Passion, Short Pieces #3,Solo POUM!, Short Pieces #2, POUM #16(Out to Lunch), Sunday Afternoon, Short Pieces #1, In Search Of a word(Lilburn)

John Fisher(ジョン・フィッシャー)は、6x1=10(ReEntry Records)で知っていましたが、INTERfaceは知りませんでした。 6x1=10 はLester Bowie、Arthur Blythe、Perry Robinson、Charles Tyler、Mark Whitecage、Rick Kilburnの6人とのDUOで構成されメンバーの豪華さで即購入しましたが、INTERfaceのメンバーには馴染みが無く、値段もそこそこ(といっても2,500円程度)だったので、悩んだ末に購入。

John Fischerは1930年ベルギー生まれ、1970年代にはニューヨークにおいてロフトジャズで活躍。 多才な人でコンピュータアートの先駆者としても知られ、現在でもARTMUS(e)と名付けられたアートギャラリーをオープンしていますので訪れてみては如何でしょうか。 現在もJazzとArtの両方の世界で活躍しています。 INTERface名義ではMarion Brownとも奏っているようで、誰か持っていたら教えて下さい。

圧巻はやはりPOUM(意味は下記の用語説明参照)の3曲、アカペラで声というより口から出る音を駆使した掛け合いで、テンポもあり実験音楽的な表情を含んではいますが面白い。
このような楽曲の最後に演奏される”In Search Of a Word”は唯一バップスタイルで、何故か新鮮さをもって聴けました。 AEOCのコンサートを思い出します。

ライナーノートの最後に用語集があり、2つだけ紹介します。(原文のまま)
INTERface:Camber Jazz Ensemble exloring new sounds in jazz ideom producing an innovative language.
POUM:Improvised vocals exploring the many ways to use the voice and body for sounds - cough, breath, hiss, hum, rasp, click, clap, slap - POUM!

ページの先頭の戻る

Gary LeFebvre@Another Place
タイトル:Another Time , Another Place
レーベル:GCL-33


★★★★

メンバ:
Gary LeFebvre(ts),
Feff Elliott(fl-h),Kei Akagi(p),John Patitucci(b),Tom Brechtlein(dr),etc
録音:
Feb/1985
曲目:
Outsiders,Bossa Briosa,Another Time Another Place, One for the Butler, Rebel's Run, Yesterday I Heard the Rain, Repentance, Poor Juan
このレコードは、メンバーに日本人のピアニスト ケイ赤城の名前がクレジットされていたので購入しました。 Limited Editionと書かれているし、何枚売れたのだろうか。 ライナーにはFrank Butlerの称賛のメッセージが引用され、「このレコードを通じて世に知られていない偉大なミュージシャンにチャンスを与えることが出来れば...」と述べられてます。 未だに認知度の低いGary LeFebvreが日本でも認められれば、このホームページを立ち上げた甲斐があったと思えるのですが。 本当に良いのだから!

このレコードは一曲を除き自作曲で占められていますが、どの曲も親しみ易く一気に聴き通せる内容となっています。 若手を従えリラックスした演奏となっていますが、Mose Allison Trioに加わったDVD(Mose Allisonの歌はちょっと辛いが我慢)を聴くと、気合が入って非常にテンションの高い演奏を聴くことが出来ます。 凄い!!!
このレコードは近年CDで再発されたので手に入るかも知れません。 また、2006年には新録”Some Other Time”(未入手)が発売されています。

2009年に70歳を迎えて誕生日コンサートを行った様で、今はSan Diegoでローカル・ミュージシャンとして活躍しています。

つまらないピアノ・トリオのCDなど作らずに、Gary LeFebvre(ゲイリー・ルフェーブル)さんの新録を企画する日本の会社は無いのかな〜、頼みますよ!

ページの先頭の戻る
Eddie Johnson@Indian Summer
タイトル:Indian Summer
レーベル:nessa n-22

★★★★

メンバ:
Eddie Johnson(ts),
Paul Serrano(tp),John Young(p),Eddie de Haas(b),George Hughes(dr)

録音:
June 24 & July 2 1981
曲目:

Self Portrait(of the Bean), Indian Summer, The Choice, Blue Star, Splanky, Misty Thursday, My Baby Just Cares For Me
このジャケット、レーベルnessaで即購入を決定。

Eddie Johnson(エディー・ジョンソン)はLester Young系のテナー、Webにはほとんど情報がないのでライナーを少し訳すと次のように書かれています。

ニューオリンズに生まれ、1941年にシカゴのローカル・バンドで演奏を始める。その後Cootie Williamsのバンドに参加。1946年にはDuke EllingtonとLouis Jordanのバンドから同時にオファーを受けたが、結婚直後であったため、大金に釣られCootie Williamsの方を選択した。しかし2年ほどで退団しシカゴに戻り、市に雇われ会計機(コンピュータの始まり)から仕事を始め70年代終わりまで続け、チーフ・エンジニアまで務めた。

リタイア後に再度目覚めてこの録音に繋がったようです。このレコードですが、懐かしいリラックスしたジャズを聴かせ、何度聞いても良いなと思わせる演奏です。それにしても、大金に惑わされずEllingtonバンドに行くことを選んでいたら、この人の人生も違ったものとなっていたでしょう。一つの判断が人生の岐路となる代表的なサンプルのようです。

ページの先頭の戻る
Fraser MacPherson@Live at the Planetarium
タイトル:Live at the Planetarium
レーベル:West End 101


★★★★

メンバ:
Fraser MacPherson(ts),
Oliver Gannon(gu), Wyatt Ruther(b)

録音:
December 16 1975
曲目:

I'm Getting Sentimental Over You, Li'l Darlin', Lush Life, My Funny Valentine, Tangrine, Django, I cried For You
Fraser MacPherson(フラサー・マックファーソン)は、カナダのミュージシャンで、これがファースト・アルバムです。 当時47歳という遅咲き、自身で立ち上げたレーベルでの発売、しかも場所はプラネタリウム、正にアンダーレイテッドなミュージシャンそのものと謂えます。 この後にConcord、Sackville、Justin Timeなどから数枚のレコードを出し、1993年に亡くなっています。

Fraserのテナーは優しく包み込むような音色で、Benny Carter On Tenorと例えると良いように思います。 ドラムレスがこの日のFraserの演奏にぴったりで、切れのあるOliver Gannonのギター(カナダでは第一人者として認知されている)、控え目なWyatt Rutherのベースがまた良い。プラネタリウムという場所にしては録音もかなり良く、優しいテナーの音が十二分に伝わります。

こんなマイナーなレコードが良く手に入ったと思います。 これも何かの縁というか巡りあわせというか、このホームページで紹介する義務を感じてしまいます。 余談ですが、Concord CJ92のオリジナルがこの盤です。

ページの先頭の戻る
Curtis Peagler@I'll Be Around
タイトル:I'll Be Around
レーベル:Pablo 2310-930


★★★

メンバ:
Curtis Peagler(as,ts),
Gildo Mahones(p), Herbie Lewis(b), Billy Higgins(dr)
録音:
December 18 1986
曲目:
Sky Mongoose, I'll Be Around, I'll Close My Eyes, Nina Never Know, Johnny One Note, Blues For Eric Stephen, Old Forks, Surrey With The Fringe On Top
Curtis Peagler(カーティス・ピグラー)はジャズ批評の楽器別に載っているのでルール違反ですが、このレコードが素晴らしいので敢えて紹介します。

ほとんど無視されている人ではないかと思います。 私もこのレコードを聴くまでは全く頭に入っていませんでした。 Bioを簡単に纏めると次のようになります。

1930年(1927年説も)オクラホマで生まれ、1992年没。 Charlie Parker、Eddie "Cleanhead" Vinsonの影響を受け、1960年以前はローカルなR&Bバンドで演奏していた。 1960年代前半にはLem Winchesterのグループで2枚、自分で率いたModern Jazz Disciples名義(同名タイトル)でNewJazzより1枚録音を残している。 その後Ray Charles(1965-1969) Count Basie(1970-1977)で演奏したが、ほとんど表に出ることなく生涯を終えている。

ということで、Lemのグループでの演奏やModern Jazz Disciplesでの演奏は未聴で断言できませんが、このレコードが唯一傾聴に値する演奏を残せたものでは無いかと想像します。 自分の望むメンバーを集めたようで、カリプソ<Sky Mongoose>では、Billy Higginsが軽快なドラムを聴かせています。(20年ほど前だったと思いますが、誰かのバックでの演奏を生で聴きましたが、センスの良さに感心した記憶があり、このレコードでもセンス抜群のところをみせています) 肝心のPeaglerですが、Parker派で片づけてしまえば其れまでですが、切れがあり澄んだ音色でハイレベルな演奏をしています。

ページの先頭の戻る
Ramsey McLean@New Orleans Now!
タイトル:Histry Made Every Moment. New Orleans Now!
レーベル:Prescription 1981


★★★

メンバ:
Ramsey McLean(b)
Tony Dagradi(reeds),
Larry Sieberth(key), Alvin Fielder(dr), etc.
録音:
Jan. 20 1981
曲目:
 
Go For The Throat, The Painter, BWE-BOP, A Little Rest, E.T. All, Still(There's A Mingus Among Us), Burning Instructions For Angel Wings
このレコードを購入した時には参加メンバーは誰も知らないし、冴えないジャケット、タイトルが【ニューオリンズの今】、手を出し難い条件が揃っていましたが、ダメなら放出すれば良いと思い購入した一枚です。

このレコードが録音された当時は、Wynton Marsalis(ウイントン・マルサリス)がJazz Messengersに入って活躍を始めたばかりで、まだニューオリンズのジャズ勢力をアピールする必要があったのでしょう。 メンバーは全員地元のミュージシャンで固めています。

フリー、ハードバップ、フューチャーなど幅広いジャズをやっています。 このように書くと散漫な感じを受けるのですが、どの曲もそれなりで纏まったアルバムとなっています。 

一曲目<Go For The Throat>は、Tony Dagradi(トニー・ダグラディ)のDolphyを思わせるバスクラで幕を開け、続いてLarry Sieberth(ラリー・シーベルス)がピアノで引っ張り、ミンガス風の曲想です。 続く<The Painter>はスローな曲で、Tony DagradiとRamsey McLean(ラムゼイ・マックリーン)のDUO、ここではベースがアルコで頑張っています。 一曲飛ばして、A面4曲目<A little Rest>は一転してWeather ReportのMilky Wayを彷彿させる曲でキーボードのLarryが効いています。 B面では二曲目<Still>がスロー・バラードの曲で全員が非常に良い演奏をしています。

4人の中で、Tony DagradiだけはCarla Bleyのバンドでやったり、リーダ・アルバムも何枚か出して少しは知られた存在となっていますが、他の3人は未だにジャズの表舞台には出ていません。 特にLarry Sieberthは地元では幅広く活躍しているにも関わらず、どうもニューオリンズから外に出ない様で、マイナーな存在のままでいます。

アンダーレイテッドにも色々あり、この人達は不遇ではなく活躍の場を地元に選んだが故に広く知られることのないミュージシャンなのです。 

ページの先頭の戻る
Paul Guerrero@Texas Tenors
タイトル:Texas Tenors
レーベル:Jazz Mark 104


★★★★

 
メンバ:
Paul Guerrero(dr)
Marchel Ivery(ts), James Clay(ts), Kirby Stewart(b), Floyd Darling(p)
録音:
Sep. 30 Oct. 1 1985
曲目:
 
Prince Albert, Who Can I Turn To, Someday My prince Will Come, The Nearness Of You, Billie's Bounce, Jeannie, Wee, My Romance 
こんなジャケットのレコード、普通は手が出ません。 ジャズ批評の「最後の珍盤を求めて」コーナーでの好評価が頭に残り、暫く後に神田神保町のトニー・レコードで見かけ購入に至りました。 まさにタイミングですね、2つのことがこの順序で自分に起こっていなければ手元には届かなかった訳です。

話は脱線します。 トニー・レコードで購入した背景ですが、当時神田神保町に会社があり昼休みはトニー・レコード、富士レコード社、ちょっと足を延ばして御茶ノ水のDISK UNIONに良く通い、この時代に相当数のレコードを購入することが出来ました。 その後、会社が大森方面に引越すことになり、会社を辞めました。(辞めた理由の2割程度は、レコード漁りが出来なくなることにあったのです。 次の会社は新宿西口、トガワ、オザワ、シスコ、等々があり、ここでもレコード漁りに都合良いロケーションがありました。 コレクターの手本です。)

復旧します。 James Clay(ジェームス・クレイ)以外のメンバーは全く知らない人達でした。 このセクションで売り込みたいのはMarchel Ivery(マーシェル・アイバリー)です。B面2曲目に入っている<Jeannie>でソロを聴く事ができますが、2テナーの二人は双生児のように似た演奏をしており、二人は協調、シェア、一緒、仲良く、といった感じでやっています。 このレコードでは、誰がと云う事では無く、全員の演奏で良いパフォーマンスを出している感じです。

Marchelは、その後、Larning House(ダラス、テキサスに本局地を置くレーベルで、アメリカ南部の過小評価のミュージシャンの紹介を目的に設立されました)から3枚のCDを出し、少しは知られる存在になったと思いますが、残念ながら2007年にダラスで突然亡くなってしまいました。

ページの先頭の戻る
 
タイトル:POLYRHYTHM
レーベル:BRIKO 1000


★★★★

メンバ:
Peter Magadini(dr),
George Duke(p,e-p,moog), Don Menza(ts,ss,fl,picc), Dave Young(e-b)
録音:
1975
曲目:
 
Doin' Time and a Half, Five for Barbara, The Modulator, Seventy Fourth Ave, Samba de Rollins, Midnight Bolero
Peter Magadini(ピーター・マガディーニ)をアンダーレイテッドなミュージシャンとして紹介することには少し違和感がありますが、あまり知られていないと思いますので敢えて取上げます。 この人はジャズにおけるポリリズム(wikiで説明とサンプルを聴くことができます)の大家で、何時もポリリズムを叩いている超絶技巧のドラマーです。

このレコード、再発盤は時々見掛けますがオリジナルはない。 昔渋谷にあったジニアス(その後、中野坂上に引越し)で聴き購入しました。 買ったは良いのですがピンと来るものがありませんでした。 しかし、数年前に聴き直した時に、これ良いんじゃないかと思い直した盤です。 《環境の変化》、《その時代の雰囲気》、《感性の変化》等々で好みは変わってくるものです。

このレコードですが、全曲色々なポリリズムで構成されており、<Seventy Fourth Ave>は曲名が示す通りSeven Against Four(7/4)のポリリズムの曲で、こんなリズムの組み合わせを同時に叩けるのは神業ですね。

音楽としてのハイライトは何と言ってもB面1曲目の<Samba de Rollins>で、ドン・メンザのテナーを周りから激しく煽り、途中からのテナーとドラムのDUOが大変にホットな演奏でドン・メンザの凄さが分ります。 また、ジョージ・デュークのエレピ、シンセがポリリズムにマッチしており、このレコードの価値を高めています。

ページの先頭の戻る
TOP < Vol.1 Vol.2 >
 Copyright(c) 2009 tam.ra All Rights Reserved.
このホームページの全ての文章の文責及び著作権は、tam.raに帰属します。
inserted by FC2 system