ベスト・ソロ・アルバムピアノを除きソロのレコーディングは少ないのですが、フリーに目を向けると素晴らしいレコードが結構あります。 ソロを特集した雑誌は皆無と思われますので、お勧めのレコード(一部CD)を紹介します。 単一楽器で1つのレコードを埋め尽くすことは簡単ではないと想像され、そのチャレンジ精神に敬意を表します。 良いソロの演奏に共通していることは、高いテンションを持続する力に尽きると思います。TOP |
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Drums | ||||
”Stories” CD-TZ7062 ★★★★ PARCOでの公演パンフレット |
Milford Graves 録音: June 25 2000 曲目: Optical Inversions, Speaking To The Spoken, Changeble Changes, Territorial Moods, Continuous Conversations, Evolving pathways |
Milford Graves(ミルフォード・グレイブス)、この人を措いて他にいません。 どうやって打楽器だけでアルバム1枚丸々を押し通すことが出来るのか、不思議なほどの集中力を保った演奏です。 この一言に尽きます。 日本人では富樫雅彦もチャレンジしていますが、残念ながら少しレベル差があると感じます。(評論家の先生方は謂わないと思いますが) 育った環境、音楽性の違い等と言ってしまえば其れまでですが、ドラマーの必須条件の1つにパワー(体力)があると考えます。 Elvin Jones、Sunny Murray、Art Blakey、皆凄いパワーを持っています。 富樫の場合、ハンディキャップがあることは理解しますが、やはり線の細さから来るバッシ、ドカン、チャーン、ドドドド、と叩いた時の切れが違うのです。 個人的な勝手な意見です。 好みの問題かも知れません。 こんなコメントを書いていますが、実は富樫のリーダ・アルバム5枚を所有しており、結構好きです。 TZADIKからは、もう1枚”Grand Unfication”(TZADIK TZ7030)が出ています。 ジャズを聴き始めたころ、渋谷が自宅と大学の経由地であったこともあり、音楽館、メアリー・ジェーン、ジニアスの3つのジャズ喫茶には良く通いました。 この中でフリーに一番力を入れていたのがメアリー・ジェーンでした。 木張りの壁にはAnthony BlaxtonやSteve Lacyのサインがあったように記憶しています。 普段はコーヒーしか飲まないのですが、ここではミルク・ティー、抜群に美味しかった。 この店で聴いた”Meditation Among Us”(Kitty 1021)を切っ掛けにMilford Graves(ミルフォード・グレイブス)が頭に刻み込まれました。 このレコードのメンバーは、Milfordの他は日本人で、安部薫(as)、近藤等則(tp)、高木元輝(ts)、土取利行(ds)、今思えば錚々たるメンバーで迎え撃ったのですね。 ページの先頭へ |
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Base | ||||
”Journal Violone” Opus One #2 ★★★★★ |
Barre Phillips 録音: Nov. 1968 曲目: Part One, Part Two |
Barre Phillips(バー・フィリップス)はMilford Gravesと同じく巨人の一人です。 この人を措いて他にいません。 Barre
はバールではなくバーと発音するそうです。 The Trioでの演奏やECMに残したベースをフィチャーしたアルバムが有名ですが、古くはEric Dilphy:<Vintage Dolphy>やJohn Coltrane/Archie shepp:<New Thing at Newport>での演奏が残されています。 <at Newport>を聴き直しましたが、SheppとBobby Hutchersonの存在感の大きさに隠れ気味ですが、B面2曲目の”SCAG”でのアルコでのソロでは頑張っています。 技術的なことは全く分りませんが、このレコードでの演奏はベースの持つ可能性を最大限に出し尽くしているのではないかと感じます。 ジャズとクラッシック(現代音楽)で音楽上の共通点があると考えますが、この演奏は多分クラシック好きの人からも高く評価されること間違え無しです。 吉沢元治の”インランド・フィッシュ”(トリオPAP-9020)がこれに迫るベース・ソロ作品(豊住芳三郎が一部加わる)ですが、やはり一歩、二歩及ばないのではと感じます。 ページの先頭へ |
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Soprano Saxophone | ||||
”Clinkers” hat Hut hat-F ★★★ |
Steve Lacy 録音: June 9 1977 曲目: Frickles, Duck, Coastline, Micro Worlds, Clinkers |
云わずと知れたSteve Lacy(スティーブ・レイシー)です。 ここまで紹介するとSteve Lacy(ss)、Barre Phillips(b)、 Milford Graves(dr)によるトリオ作品が有ればと無い物ねだりしてしまいます。 アルバム・タイトル”Just
Three”でどうでしょう。 LacyとPhillipsは欧州、しかもフランス中心で活動していたのに何故共演アルバムが無い(JCOAでは一緒したが)のだろうか。 相性が悪かったのかな! 不思議です。 ところで、掲載レコードの選択、迷うというか、どれでも良いというか、困りました。 ご存じの通り、スティーブの場合、どれを選んでも高いレベルの出来だからです。 と書いて、レコード棚から1枚を抜き出そうと手を伸ばしましたが、掲載の1枚しかソロ・アルバムが有りませんでした。 記憶では沢山あった筈なのに。 内容は、飄々としたというか、マイペースそのもので独自世界の存在です。 強靭な鋼のような演奏で、誰が相手であろうと少しのズレも無い演奏をします。 スティーブは、1952年頃からデキシーランド・ジャズで演奏活動を開始し、1954年に初録音を残しています。 最初はクラリネットとソプラノの二刀流(8歳の頃にピアノで音楽を始めた)でしたが、1950年代半ばにはシドニー・ベッシェに啓発されソプラノ一本に絞っています。 1953年のこと、デキシーランド・ジャズ・クラブで演奏しているときにセシル・テーラーに声を掛けられたことを切っ掛けにフリー・ジャズに移り、それ以来の半世紀ソプラノ・サックスによる数々の名演を残し、2004年に没、合掌... この人も度々来日しており、ベスト・パフォーマンスの1つと云っても過言ではないレコードが日本で創られています。 Stalks(コロンビアYQ-7507-N)です。 メンバーは、Steve Lacy(ss)、富樫雅彦(perc)、吉沢元治(b)の3人。 Lacyのミドル・テンポのソロに導かれ吉沢、富樫が加わる。 突如とし”ピーーー”という金属音、徐々に熱を帯びた演奏となるが、3人が独自の世界で音を奏でているがその接点が融合し、完全な一体としてのパフォーマンス、どのような気持ちで演奏しているのでしょうか。 この演奏を聴くと、"Just Three"が創られていれば双璧を成す凄いレコードとなっていたと確信します。 ページの先頭へ |
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Piano | ||||
"Rhythms and Sounds Piano" CORA 01 ★★★★ 中に入っていたポートレイトの1枚、B4位の大きさ by J.J. Pussiau |
Randy Weston 録音: 1978 曲目: Niger Mambo, Portrait Of Vivian, Willie's Tune, Hi Fly, The Man I Love |
古くはArt Tatum、Bud Powellなど、また近年ではKieth Jarrettなどのソロ・ピアノ作品がありますが、ここではちょっと変化球でRandy
Weston(ランディ・ウエストン)を紹介しましょう。 このレコード、副題がAfrican Rhythmsと付けられており、一曲目の”Niger Mambo”では少しだけDoller Brandの”African Piano”を思わせる部分も出てきますが、遙かに幅広いセンスをもった演奏を聴かせています。 流石ミュージシャンズ・ミュージシャンとして認知されていることが頷けます。 Theronious Monkの影響を受けたとありますが、テクニックでは遙かに上空を行っています。 また、作曲の才能も高く、”Hi Fly”(このレコードでも演奏)や”Littile Niles”などの作品がありますが、曲作りではMonkが一歩リードといって良いでしょう。 公式Webサイトが非常に凝っており、Randy Westonの全てを知ることができるので是非訪れてみて下さい。 自らのResumeやMailing Listへの加入まであり、大変に楽しいサイトです。 演奏も聴けます。 ページの先頭へ |
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Tenor Saxophone | ||||
” Solo In Japan” CD-Modern Music PSFD-94 ★★★★ |
Charles Gayle 録音: July 6, 7 1997 曲目: Come Ye, Walking Nearer, Praise God, Christ Changes You, Woe And Joy |
テナーのソロ演奏、David Murray(ソロ3部作)を選ぼうかなと最初は考えましたが、Murrayは既にメジャーとなっているので、よりマイナーなGayleを選びました。 Charles Gayle(チャールス・ゲイル)は20歳台はホームレスで、その後ストリート・ミュージシャン(これもホームレスに近いと思われる)として生計を立てていたそうです。 初レコーディングは 49歳でSilkheartというスウェーデンのフリー系のレーベルに残していますが、このレーベルで発見されなければ、全く無名のまま世を去っていたと思うと、功績大です。 Gayleの演奏を聴いてまず思い浮かべるのはAlbert Aylerです。 Murrayのデビュー作”Flowers for Albert”(India Navigation 1026)はAylerの後継者を謳い文句にしたデビューでしたが、Gayleの演奏はより直系といえます。 この人、ストリートでやっていた時は持ち運びに便利なアルトを中心で演奏していたそうですが、他にもソプラノ、バスクラ、そしてピアノと色々な楽器を演奏します。 このCDにもピアノ・ソロの演奏が1曲収録されていますが、これはMonk似のピアノで平凡なものであまりお勧めできません。 ページの先頭へ |
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Alto Saxophone | ||||
"Solo Saxophone" Sweet Earth Records SER1001 ★★★★ |
Marion Brown 録音: July 2 1977 曲目: Hurry Sundown, Angel Eyes, El Bochinchero, And Then They Danced, La Placita, Encore |
アンソニー・ブラックストンはちょっとキツイので、マリオンにしよう。 Marion Brown(マリオン・ブラウン)が、この《Solo Saxophone》を自身のベスト・アルバムとして挙げているインタビュー記事を読んだことある。 確かに1970年代がピークだと思うが、個人的には《November Cotton Flower》や《Sweet Earth Flying》などを推薦したい。 生まれ故郷ジョージアのイメージを押し出し(行ったことないがそう思う)、フリー・ジャズとは距離を置いた作品です。 マリオン・ブラウンの音楽を聴いて思い浮かべる景色は<黄茶色に穂を垂れた麦畑>、あるいは<白く弾けた綿花畑>といったアメリカの広大な大地だ。 アフリカの草原ではない。 同じイメージの音楽家にバイヤード・ランカスターがいる。 私はこの二人を勝手に【牧歌派】と名付けている。 このレコードですが、一曲目<Hurry Sundown>の出だし一瞬の一音が、Jackie McLeanの<Left Alone>を思わせる。 それも直ぐに消え、アルバム全体はメロディアスで詩的な牧歌派そのものですが、自己への対峙を全面に出した朴訥な感じのする作品となっています。 <Angel Eyes>の楽想が「静まり返った町外れの夜の寂しさ」といった感じで、その雰囲気が最高です。 余談: マリオンの子 Djinji Brownは、ヒップホップ、ソウル、あるいはブルースの世界では高い評価を得ているようです。 ページの先頭へ |
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Guitar | ||||
"ロンリー・ウーマン" three blind mice PAP-25030 |
高柳 昌行 録音: Aug. 21, 22 1982 曲目: Lonely Woman, Kary's Trance, Sketches, Song For che, Lennie's Pennies, Black The Color of My True Love Hair |
<ロンリー・ウーマン>高柳昌行の存在をすっかり忘れていました。 デレク・ベイリーは理解できないのですが、この高柳はOKです。 まず高柳がどのような音楽家であったかを知るためには、勝田均氏のHP(及びそこからのリンク・ページ)を参照頂きたい。 高柳は58年の生涯でスタイルを大凡次の様に変遷させています。 ・1932年生まれ ・20歳台:日本のジャズの黎明期でバップ、クール・スタイル ・30歳代:フリー・スタイルが加わり、その方向に傾く ・40歳代:即興演奏を強める ・50歳代:ノイズ・ミュージックに突入 ・1991年他界 こんな感じでしょうか。 ”COOL JOJO”≪Jacket of This Monthに掲載≫を最後に、以降亡くなるまでの約8年間(50歳代)は、フリー、即興、ノイズの世界へ没入して行く訳ですが、本アルバムはその最初の作品にあたります。 ご存知の通り、<Lonely Woman>はOrnette Colemanの曲ですが、他にも<Song For Che>Charlie Haden、<Kary's Trance>Lee Konitz、<Lennie's Pennies>Lennie Tristanoなど、フリー、クールの両方の巨匠の作品を取上げている点に高柳の指向が表れています。 本アルバムは、フリーとクールを融合させた高柳独自の解釈で演奏されており、以降のノイズ・ミュージックへの伏線となっています。 つまり、フリーが持つ即興性をより強めると同時に、クールが持つ音の純化をより進めたのです。 その結果、≪空≫の状態を目指しノイズ・ミュージックの彼方に飛んで行ってしまったのです。 |
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