MUSEレーベルVol.1

MUSE レーベル Vol.1

まずは、Museレーベルについて簡単に説明します。

1972年にJoe Fieldsによって設立され1996年に売却されるまで400枚を超すアルバムをリリースしました。 Joe Fieldsは、Don Schlettenが1978年にXanaduを設立し袂を分かつまでPrestige、Cobblestone、Buddahなどのレーベルを一緒に取仕切ってきましたが、Museを売却した後にはHighNote、Savantを設立し、CD時代の今も活躍しています。 現在は32JAZZが版権を持ってCDで再発(ジャケットが改悪され残念ですが)しています。 

私のMUSEコレクションは総数で80枚強しかありませんが、その中から更に厳選して推薦盤を紹介します。
MUSEはPrestigeの一万番台を(Cobblestoneと並行して)引継ぐ形でスタートしていますので、コテコテ&どろどろ系が沢山作られています。 それらは《どろどろベスト・アルバムVol.1》にまとめ、ここではそれ以外の素晴らしいアルバムを気の向くまま紹介します。

TOP << Vol.1 Vol.2 > コテコテMuse >
Title, Label Member, Tune  Comment

”Never Again!”
Muse 5001


★★★

メンバ:
James Moody(ts), Mickey Tucker(org), Roland Wilson(b), Eddie Gladden(dr)
録音:
June 8 1972
曲目:
Never Again, Secret Love, A Little 3 For You, St. Thomas, This One's For You, Freedom Jazz Dance
MUSEレーベルの最初を飾るレコードがJames Moody(ジェームス・ムーディ)の<Never Again!>です。(5001番を紹介しない訳には行きません)

美しいコーティング仕上げのジャケット、また堂々たるMUSEの竪琴ロゴから力の入れ様が伝わって来ます。 内容の方は残念ながら少し拍子抜けした演奏となっていますが、ベスト・チューンはB面2曲目<This One's For You>ミッキー・タッカーの作品で、ジェームス・ムーディの優れた技量を示す演奏を堪能でき、聴き応えのあるバラードに仕上がっています。

主人公から反れますが、サイドマンのミッキー・タッカーはピアノしか弾かないのかと思ってましたが、ここではオルガンを弾いており全体に調子を付けています。(タッカーは、昔R&Bでオルガンを学んだようで、Roland Kirkの<Blacknuss>でもオルガンを弾いている)

MUSEレーベルはこれを皮切りに、Richard Davis、Roy Brooks、Jimmy Raney、Don Patterson、Sonny Stittと錚々たるミュージシャンが続きます。

”Live!”
Muse 5026

★★★★

メンバ:
Pat Martino(gu), Ron Thomas(e-p), Tyrone Brown(e-b), Sherman Ferguson(dr)
録音:
Sep. 1972
曲目:
Special Door, The Great Stream, Sunny

最も好きなギタリストの一人がこのPat Martino(パット・マルティーノ)です。 Prestige時代は、Willis Jackson、Jack McDuff、Groove Holmes、Jimmy McGriff等々のドスの利いたオルガン・ボスの面々を前にして本性を現せない状態が続いていましたが、MUSE時代に入って呪縛から解き放たれ最高のレコーディングを数多く残しています。

これを書くにあたりMUSEのマルティーノ盤を全て聴き直した結果、<Live!>に行き当たりました。(決して市場の評価に従った訳ではありません) この人の本領はアップテンポな曲にあり、このレコードが3曲ともアップテンポ、長尺の為かも知れません。 切羽詰った奏法が心を掻き立て、絶対に追い抜く事を許さない、そんな演奏です。

マルティーノのホームページを見ると、自らもレコードをコレクションしているそうで、ミュージシャンのコレクションがどんな物か面白いので訪れて下さい。 誰に影響を受けたかは各レコードのコメント欄に書いてあり、クラシック音楽、インド音楽、ジャズではWes Montgomery、Jimmy Smith、Stan Getz、Gerald Wilson、Kenny Garrettなどが挙げられていますが、MUSE時代の演奏はオルガンのJimmy Smithの影響が大だと思います。

活動停止期間(精神的障害)の後1987年<The Return>で復活を飾る訳ですが、復活後の演奏はフィニアス・ボーン同様、以前の張り詰めた感じが失われてしまっており残念です。

”Blues For Duke”
Muse 5129


★★★

メンバ:
Sonny Stitt(as,ts), Barry Harris(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(dr)
録音:
Dec. 3, 4 1975
曲目:
C. Jam Blues, I Got It Bad and That Ain't Good, Perdido, Blues For Duke, Don't Get Around Much Anymore, Satin Doll
Sonny Stitt(ソニー・スティット)は、Houston Person、Woddy Shaw、Mark Muphy、Charles Earlandなどと並んでMUSEを代表する人で、8枚のリーダ・アルバムを残しています。

最初に買ったスティットのレコードは<STITT, POWELL & J.J.JOHNSON>(渋いですね)、次にスティットを意識したのはCobblestoneの2枚で、これ以降MUSEのスティットを買い集めました。 Cobblestoneの2枚はスティットの名前をジャズ中級者まで知らしめた名盤です。

MUSEのスティットはどれも甲乙付け難い出来ですが、ここではサイドマンに注目して<Blues For Duke>を選んでみました。 バリー・ハリスは参加しただけで良いアルバムが出来上がる、サム・ジョーンズは二度と現れないベース、ビリー・ヒギンズはこれぞ裏に回ったドラムの手本、そんな面々がサポートした素晴らしいアルバムとなっています。

スティットは亡くなる寸前に来日公演を果たしていたことをご存知ですか。 末期癌を承知の上で1982年7月11日来日、19日帰国、22日死去しました。 死の10日ほど前にはるばる日本ツアーを敢行する気持は理解出来ません。 旭川で1曲のみ演奏、札幌では車椅子での挨拶のみ、最後の八雲は行けずテープに吹き込んだメッセージのみという壮絶なツアーだったそうで、呼び屋さんは治療と生きて帰すことで必死だったみたいです。 ジャズ批評No.46「壮絶!ソニー・スティットの死」川田貞家氏に詳しいので是非読んで下さい。 川田氏の文章の巧みさと、顎に張ったバンソウコウ(末期癌が皮膚にも転移し出血)が痛々しい写真(無垢な顔が眩しい)、涙無くして読むことは出来ません。

”Feelin's”
Muse 5045


★★★
メンバ:
Teddy Edwards(ts), Conte Candoli(tp), Dolo Coker(p), Ray Brown(b), Frank Butler(dr), Jerry Steinholz(Conga)
録音:
Mar. 25 1975
曲目:
Bear Tracks, April Love, Ritta Ditta Blues, Eleven Twenty Three, Georgia On My Mind, The Blue Sombrero

Teddy Edwards(テディ・エドワーズ)は、何とも云えない安らぎを与えるテナー奏者です。 伸びきったかけ蕎麦のように温い音を出すのです。  昔からこんなテナーだったのかと確認したく、<Clifford Brown & Max Roach Quintet In Concert>B面を聴くとまともに切れのあるテナーを吹いている。 しかしテディの本質を見抜くには<Sonny Rollins At Music Inn(Teddy Edwards At Falcon's Lair with Joe Castro)>を聴きましょう。 このレコード、タイトルからも分るようにソニー・ロリンズのグループがA面〜B面1曲目、残りのB面2曲がテディ・エドワーズのグループとなっています。 従ってB面を頭から聴くと可哀相だがロリンズと連続して聴くことが出来き比較できるのです。 やはり歯の間からスースーと空気が漏れている。 これが良いのです。

ところでこのレコード(あまり見掛けません)ですが、決して名盤とは云えませんが、入門者向けの曲がずらりと並んでおり、リラックスして聴ける点で好きなMUSE盤の一枚です。 テディは2003年に亡くなりましたが、晩年の約10年間に数々のリーダ・アルバムを出していますが、何れもコクがあり推薦できる内容となっています。
 
"Night of the Mark VII"
MR5076


★★★

メンバ:
Clifford Jordan(ts,as,fl), Cedar Walton(p), Sam Jones(b), Billy Higgins(dr)
録音:
Mar. 26 1975
曲目:
John Coltrane, Highest Mountain, Blue Monk, Midnight Waltz, One For Amos
Clifford Jordan(クリフォード・ジョーダン)は好きなテナー奏者の一人です。 一流テナーとして扱われることは少ないのですが、出来不出来の波が小さく、どの作品も高いレベルとなっています。 Strata-Eastの≪In The World≫が有名ですが、他にも素晴しいレコードが沢山あります。

クリフォード・ジョーダンの代表作を1枚選べと言われたら、名作が多過ぎて選べません。 そこをどうにかと迫られ、迷いに迷ってやっとの思いで選ぶと、≪Starting Time≫(Jazzland)、いや違う≪Royal Ballads≫(Criss Cross)、いや違う≪Dr. Chicago≫(Bee Hive)、やはり迷ってしまう。 何でMuse盤が入っていないのだと怒られそうですが、Muse盤も伍して良いです。

Museレーベルからは以下の4枚をリリースしています。

* Night of the Mark VII MR5076 1975 (所有)
* Remembering Me-Me MR5105 1976 (未聴、ジャケ現物見たこともない)
* Inward Fire MR5128 1977 (未聴)
* The Adventurer MR5163 1978 (所有)

残念ながら半分の2枚しか所有していませんが、この2枚の出来は大変良いので他の2枚も良いはずと確信しています。 ここでは≪Night of the Mark VII≫を取上げます。(Selmer Model Mark 7からネーミング)

このレコードでのハイライトは最初の曲<John Coltrane>です。 この曲はジョーダンお気に入りのベーシストBill Leeの作品で、コルトレーンへのオマージュ、”John Coltrane...Black Spirit...John Coltrane, First New-born”のコーラスが印象的です。 他の演奏も含めて、コンボとしてのまとまりが大変に良く、控えめながら全体を抑えているドラム、珍しく長い時間がソロに割かれているベース、マイペースでスインギーなピアノ、全員が良い演奏を聴かせています。

これはパリでのライブ録音で、聴いたフランス人は皆満足したこと間違いなし!
TOP << Vol.1 Vol.2 > コテコテMuse >
 Copyright(c) 2009 tam.ra All Rights Reserved.
このホームページの全ての文章の文責及び著作権は、tam.raに帰属します。
inserted by FC2 system